分野別の詳説:参照したマニュアルの主要な仕組み・操作・設定を翻訳・要約・再構成した日本語解説です。全項目の逐語訳ではありません。確認順や例は編集上の補足です。手順から先に読み、必要なときに後半の仕組みの解説へ進めます。
この章の目標:追跡と保存経路をつなぐ。
準備:追跡に向くクリップ・FPSを合わせる。
実践:背景の追跡からカメラ復元まで
- Movie Clip Editorでクリップを開き、解像度、FPS、開始位置、Scene Framesを合わせます。重い場合はPrefetchやプロキシを利用します。
- 静止した背景上の、識別しやすい特徴へマーカーを置きます。動く人、反射、繰り返す同じ模様などを無条件に使わないようにします。
- Pattern SizeとSearch Sizeを調整し、Motion Modelを動きへ合わせます。平面の変形を表現したい場合も、必要以上に自由度を増やすと追跡が不安定になる場合があります。
- 短い区間を追跡し、点が別の模様へ移っていないかを確認します。誤った部分を修正してから前後へ範囲を広げます。
- カメラの焦点距離、センサー、歪み等の情報を設定します。Refineで最適化する場合も、極端に誤った初期値から正解へ必ず収束するわけではありません。
- 通常のカメラ復元では、Keyframe A/Bの両方で有効な同じトラックが最低8本あり、十分な視差があることを確認してSolve Camera/Object Motionを行います。8本は全期間の総数ではなく、選ばれた二つのフレームに共通する本数です。自動選択の場合も、選ばれるフレームがこの条件を満たす必要があります。
- 誤差と復元点の分布を確認し、誤追跡を修正します。点を削るだけでなく、必要な範囲に有効な情報が残るかを見ます。
- 床、原点、軸、既知の距離によるスケールを定め、3Dカメラと物体を配置します。接地や奥行きが合うかを時間を通して確認します。
三脚で回転するだけの映像にはTripod Motionがあります。上記の通常復元の8本・視差という条件をそのまま適用する方式ではありません。通常のソルバーと違い、実際の特徴点の奥行きは復元できず、回転と球面上への投影を扱います。追跡点を増やせばどの素材でも3Dが正しく解けるわけではありません。
トラッキングの主要設定
| 設定 | 役割 | 失敗時の見方 |
|---|---|---|
| Pattern Area | 比較する特徴の範囲 | 背景や別の動きを混ぜすぎていないか |
| Search Area | 次の特徴を探す範囲 | 速い動きへ小さすぎないか、似た模様まで含まないか |
| Motion Model | 許す移動・回転・倍率・変形 | 必要な自由度と追跡の安定性を比べる |
| Match | 参照するパターンの基準 | Keyframeと前フレーム等では、ずれの蓄積の傾向が異なる |
| Lens Distortion | レンズによる歪み | 直線が曲がる、CGが端で合わない症状を見る |
| Keyframe A/B | 初期の復元に使う範囲 | 視差、遮蔽、追跡の連続を確認する |
| Refine | 内部パラメーターの最適化 | 全ての不明な値を無条件に解決する機能ではない |
| Cleanup | 短いトラックや大きい誤差の整理 | 良い情報まで消していないか、元データを残して比較する |
実践:手ぶれだけを補償する
- 背景の安定した点を追跡し、2D Stabilizationの位置補正へ使うトラックとして登録します。
- 回転や倍率も補正するなら、対応するトラックと設定を追加します。同じ位置の一点だけでは、すべての変化を識別できません。
- 補正量と基準、必要な拡大やクロップを設定します。意図したパンやズームまで止めていないかを確認します。
- CompositorでMovie ClipノードとStabilize 2Dノードを追加します。Movie ClipのImage出力をStabilize 2DのImage入力へ接続し、Stabilize 2DのMovie Clip欄にも追跡・補正を設定した同じクリップを指定します。補正を適用する例なのでInvertはオフにします。
- Stabilize 2DのImage出力をGroup Outputへ接続します。Viewerへも分岐して補正前後を比較できます。Frameは既定ではシーンの現在フレームです。素材を時間オフセット・リタイムしている場合は、その画像に対応するフレームで補正情報を評価するようFrame入力も合わせます。
- OutputのPost ProcessingでCompositingを有効にし、解像度・FPS・フレーム範囲と連番の保存先を指定して出力します。保存した先頭・中間・末尾の画像を開き、クリップエディターの表示だけでなく出力にも補正が適用されているか確認します。
2Dの平行移動・回転・倍率の補償では、奥行きの異なる部分の視差やすべての歪みを消せません。境界の欠けを大きな拡大で隠すと画質と画角が変わるため、補正の強さと合わせて判断します。
実践:追従するマスクを合成へ使う
- Image EditorまたはMovie Clip EditorをMaskモードへ変え、新しいMaskデータを用意します。
- 対象の輪郭を制御点で囲み、Cyclicで閉じます。ハンドルで曲率を整え、Featherで境界の柔らかさを設定します。
- 動く対象なら、必要な時刻でマスク形状へキーを付けます。トラックへ親子付けして全体の移動を補う方法も使えます。
- CompositorのMaskノードで同じデータを選び、Viewerで白黒の領域を確認します。必要な処理のFactorへ接続します。
- 手足や髪など形が変わる部分は別スプライン・レイヤーへ分ける方法を検討し、遮蔽の前後で輪郭を修正します。
Plane Trackは平面への貼り付けへ使い、マスクは領域を指定します。3D復元、平面の変形、領域の輪郭という情報の違いを理解すると、素材に適する方法を選べます。
仕組みと用語を調べる
追跡と3D復元を区別する
Motion Trackingは映像上の特徴がどこへ動いたかを追う作業です。追跡した二次元の位置を使って、手ぶれ補正、画像の貼り付け、マスクの追従などができます。さらにCamera Solveでは、その情報から撮影カメラの3Dの動きを求めます。追跡点が動いているだけでは、3Dカメラの復元が終わったことにはなりません。
Movie Clip Editorにはクリップ、グラフ、Dope Sheetの表示があります。映像を見ながら点を管理し、追跡の途切れや不連続な動きを調べます。複数の表示を同時に使う場合は、エリアを分けてそれぞれに対応するビューを表示します。
素材と撮影条件
クリップのフレーム範囲、解像度、FPS、開始位置を確認します。外部動画や連番画像は参照ファイルなので、.blendを保存しただけで常に素材の内容まで埋め込まれるわけではありません。後で合成するレンダーと、元映像の時間・解像度を対応させます。
一般的なカメラ復元では、奥行きの違う位置にある特徴の視差が情報になります。カメラが回転するだけの三脚撮影には、それに対応した方式があります。動く人物や反射などを、静止した背景上の特徴と同じように使うと、カメラの動きと混同する原因になります。
マーカーの配置と追跡
コントラストがあり、形が識別しやすく、途中で隠れにくい場所へマーカーを置きます。Pattern Areaは特徴の範囲、Search Areaは次のフレームで探す範囲です。探索範囲を大きくすることと、特徴を正しく選ぶことは別です。
移動だけか、回転やスケール、変形も許すかなど、Motion Modelを素材に合わせます。正規化やチャンネルの選択も追跡へ関係します。まず短い区間を確認し、追跡点が似た模様へ乗り移っていないかを見ます。自動追跡が終わったことだけをもって、全フレームで正しいとは判断しません。
トラックの修正
一時的な遮蔽、モーションブラー、画面外への移動などで追跡が切れる場合があります。誤った位置を長い区間へ引き継ぐより、問題の区間を切り分けて修正します。トラックを結合する場合は、同じ特徴であることと時間の対応を確認します。
グラフやDope Sheetで、急な飛びや短すぎるトラックを調べます。誤差の大きい点を除けば必ず良くなるとは限らず、必要な範囲に十分な情報が残るかも考えます。画像の一点へ大量のマーカーを集中させず、フレーム内と奥行き方向に情報が分散するようにします。
レンズとCamera Solve
焦点距離とレンズの歪みは復元へ影響します。実際の直線が映像では曲がって見える場合、モデル側の形を曲げて合わせる前にレンズの扱いを確認します。原典は、カメラ情報や手動の調整、外部のキャリブレーション情報などを使う方法を説明しています。
Solveの結果は誤差だけでなく、復元点とカメラの動きを確認します。数値の平均誤差が小さくても、目的の地面や奥行きが正しいとは限りません。床、原点、軸、既知の距離を指定して3Dシーンを向け、実写へ配置する物体の大きさを整えます。Object Trackingでは、カメラに対する物体の動きを別に解くこともできます。
平面トラックと2D安定化
Plane Trackは平面上の追跡情報から画像の変形へ利用する仕組みです。看板や画面の差し替えなどが考えられます。平面が曲がる、追跡点が別の奥行きへ混ざるなど、前提に合わない素材ではそのまま一致しません。
2D Stabilizationは追跡点から平行移動、回転、拡大縮小などを補償し、手ぶれを抑えます。三次元のカメラ移動を完全に取り消す処理ではありません。補正によって画面端が欠ける場合があり、拡大やクロップとの兼ね合いを考えます。意図したパンまで固定しないよう、目標と補償量を調整します。
マスクとロトスコープ
Image EditorやMovie Clip EditorのMaskモードで、スプラインによる領域を作れます。マスクは特定の画像へ固定されたデータではなく、CompositorやSequencerで再利用できます。レイヤー、スプライン、制御点、境界のぼかしを整理します。
時間に応じて形を変えたり、追跡マーカーへ親子付けしたりして動きへ追従させます。トラックへの追従は全体の移動を補いますが、腕や髪の形の変化まで自動で正確になるわけではありません。粗いマットと詳細な輪郭を分けると、修正の目的が分かりやすくなります。
3Dと実写を合わせる
復元したカメラ、地面、物体のスケールを合わせ、照明と影、レンズの歪み、色、被写界深度や動きのぼけを整えます。元映像の歪みを取り除いて合成するか、CG側へ歪みを戻すかなど、処理の順番を統一します。最後に一枚だけでなく、時間を通した滑りや境界の変化を確認することが必要です。これらの確認順は編集上の補足です。
検証した範囲
最終確認:2026年10月23日。本文の手順・設定は参照EPUB版を基に整理しています。この章固有の操作はBlenderで実行検証していません。図は考え方と確認点を示す模式図です。実行済みの作例としては扱わないでください。
出典と利用条件
この記事で参照したマニュアルの項目:
- はじめに
- Tracking Marker
- Solve
- はじめに
- はじめに
- Track(トラック)
- Camera(カメラ)
- ワークフロー
- Editing Masks
- Track(トラック)
- Stabilize 2D(2Dスタビライゼーション)ノード
原著:Blender Documentation Team、Blender 5.2 Manual。底本はBlender 5.2 LTS ManualのEPUB版です。ファイル内の発行日時メタデータは2026年10月19日で、記事の検証日とは別です。原典のライセンス表示に従い、裏庭(Uraniwa)が翻訳・要約・再構成・説明の補足を行いました。この記事の本文・補足・独自の図解と作例画像はCC BY-SA 4.0で公開します。Blender公式による記事・推奨を示すものではありません。原典で適用対象外とされるロゴ・商標・アイコン・ソースコード・Pythonスクリプトなどには、この許諾は適用しません。