参考資料:必要なときに読む、原典に沿った日本語訳です。歴史やサービス名は原典の時点を示します。追加説明は「補足」として区別します。
この参考資料の使い方:操作を学びたい人は、本編を先に読んで構いません。この参考資料では、Blenderがどのように生まれ、公開されるソフトへ変わったかをたどります。
始まり
Blenderを生み出したのは、オランダのアートディレクターで、独学でソフトウェア開発を学んだTon Roosendaalです。技術と創作の両方にひかれたRoosendaalは、工業デザインを学び始めましたが中退し、1989年に自分の3Dアニメーションスタジオ「NeoGeo」を設立しました。同じ名前のゲーム機が登場したのは、その1年後です。最初は自宅の屋根裏部屋を拠点としていたNeoGeoは急成長し、賞を獲得し、オランダで同種の企業として最大の会社になりました。
Roosendaalが「Blender」という名前の最初のソースファイルを書いたのは、1994年1月2日です。この日は現在もBlenderの公式な誕生日とされています。BlenderはもともとNeoGeoの社内用アプリケーションとして計画され、Amiga向けに作られたレイトレーサーを含む既存のツール群から発展しました。初期のBlenderが解決しようとしたのは、制作者にとって繰り返し生じる悩みでした。難しい顧客から何度も修正を求められたとき、どうすれば負担を抑えて対応できるのか。柔軟に設定できる設計によって、その答えを示そうとしたのです。なお、名前はスイスの電子音楽バンドYelloの曲に由来します。
Roosendaalは貯金を投じてSilicon Graphicsのワークステーションを購入しました。3万米ドル相当のこのコンピューターが、Blender 1.0につながります。1995年1月に登場したこの最初の本格的なBlenderには、一つのウィンドウを利用者が自由に分割できるといった、当時としては革新的な発想が組み込まれていました。
当時、3Dは商業的に魅力の乏しい分野と見なされていました。それでもRoosendaalは、コンピューターの中に世界を丸ごと作り出せる「魔法のような力」に魅了されていました。NeoGeoの閉鎖後、彼は共同経営者のFrank van Beekと、Blenderの開発と販売に専念する新会社を設立します。Not a Number(NaN)は1998年6月に事業を開始し、Blenderをフリーミアム方式で配布しました。ソフトウェアは無料でダウンロードでき、より高度な機能を使えるようにするキーを販売する仕組みでした。
Blenderのオープンソース化
この事業モデルにより、NaNはロサンゼルスで開かれる著名なコンピューターグラフィックスの会議、SIGGRAPHに出展できました。SIGGRAPHはSpecial Interest Group on Computer Graphics and Interactive Techniquesの略です。これをきっかけにBlenderは2回の資金調達で合計約550万米ドルを集めました。しかし、厳しい経済状況、過大な支出、NaNと投資家との関係悪化により、会社は2002年初めに閉鎖されました。
NaNの消滅とともに、Blenderの開発も止まりました。NaNの出資者から権利を買い取ることができなかったRoosendaalは、新たな方法を選びます。2002年5月、Blenderをオープンソースにすることを目指して、非営利組織Blender Foundationを設立しました。Blenderを誰もが触れられる記念碑のように残し、プロジェクトに携わった人たちが自分の実績として活用できるようにしたかったのです。同年7月には「Free Blender」という、原文で「史上初」と紹介されているクラウドファンディングを開始しました。25万人のユーザーコミュニティの支援により、Blender Foundationはわずか7週間で11万ユーロを集め、投資家からBlenderを取り戻すために必要な資金を確保しました。
2002年10月13日の日曜日、BlenderはGNU General Public Licenseバージョン2の条件で公開されました。原文では、これを最も厳格なオープンソースの契約と表現しています。Blenderが無料になるだけでなく、そのソースコードも自由なまま保たれ、どのような目的にも使えるようになったのです。
Free Blenderの成功は、後にBlenderの強みとなる開発方式への道を開きました。開発の一部は助成を受けた開発者が担い、アムステルダムのBlender Foundationの中核チームが方向を導きますが、最大の力は世界中の熱心なボランティアのコミュニティです。その努力によって、Blenderは素早く改善を重ね、アーティストや制作者の要望に応えられます。このような柔軟さと創造性を、従来の事業モデルの枠内で実現するのは、はるかに難しかったでしょう。
オープンムービーを作る
Blenderの高まる能力を実制作で試すため、Blender Foundationは、コミュニティの優れたアーティストたちに3Dアニメーション短編映画の制作を呼びかけました。条件は一つだけで、Blenderを中心とするオープンソースの道具を使うことでした。
「Project Orange」というコードネームで2005年に始まったこの計画から、巨大な機械の中を進むシュールな冒険を描いた『Elephants Dream』が生まれました。映画とすべての制作素材は、Creative Commonsライセンスのもとで自由に利用できる形で公開されました。
『Elephants Dream』の成功を受け、2007年夏にBlender Instituteが設立されました。Blender Foundationの目標を定める手助けに加え、3D映画・ゲーム・視覚効果に関するオープンプロジェクトを生み出すことを目的に、常設のオフィスとスタジオを備えました。Blender Instituteは第一線のアーティストと協力し、コメディー『Big Buck Bunny』(2008年)、SFスリラー『Tears of Steel』(2012年)、詩的なファンタジー『Spring』(2019年)、ホラーコメディー『Sprite Fright』(2021年)などのオープンムービーを制作しています。
重要な転換点
オープンプロジェクトは、そのたびに3D制作ソフトとしてのBlenderに新しい要求を突き付け、それが次の改良につながります。すべての更新を挙げることはこの記事の範囲を超えますが、いくつかの節目を紹介します。
2008年初め、Blender 2.5プロジェクトが始まりました。ユーザーインターフェースの大幅な刷新に加え、ツールの定義、データアクセス、イベント処理、アニメーションの新しい仕組みを組み合わせるものでした。中心となる目標は、画面設計の基準と入力方法を時代に合わせることでした。
Cyclesは、本格的な制作に対応するパストレーシング方式のレンダリングエンジンで、2011年の2.61で初めて組み込まれました。その後、AMDやNVIDIAなど、幅広いレンダリング環境への対応が進みました。髪、モーションブラー、煙と炎、主要なシェーダーとマテリアル、適応型サブディビジョンなど、多くの機能にも対応してきました。
2019年7月の画期的な2.8リリースによって、Blenderは3D制作の主流へと進出しました。大幅に刷新された画面をはじめ、リアルタイムレンダリングエンジンEEVEE、スカルプト向けの新しいリメッシュ方法、Mantaflowの統合、2Dと3Dを組み合わせた制作も可能にする本格的な2Dアニメーション作業環境など、多くの革新が2.8シリーズに含まれました。
業界での評価は長年高まり続けていましたが、2.8は有料の競合製品に代わる有力な選択肢として広く認められた転機でした。世界的に大きく著名な企業の一部は、自社制作にBlenderを使うだけでなく、Blender Development Fundへの継続的な拠出も始め、Blenderが革新を続けられるよう支えています。
Blender本体とオープンプロジェクトに加えて、Blender Cloudもあります。この定額制のオープン制作プラットフォームでは、進行中のオープンムービーの情報が随時提供されます。また、映画制作素材の.blendファイル、アニメーションやショットの解説、シェーダー、テクスチャ、プロのアーティストや開発者による総合的なトレーニング動画も蓄積されています。講師には、アムステルダムのBlender本部で働く人々も含まれます。
Blenderの現在と未来
原文の時点で、Blenderの組織には約28人のスタッフがいます。アムステルダム、遠隔地、助成を受けた活動など、さまざまな形で働いています。しかし、このチームは、はるかに大きなコミュニティの一部にすぎません。Blenderでは、開発に貢献する人、Blenderで生計を立てる人、単にダウンロードする人まで、すべてをコミュニティと捉えています。
Blenderの使命は、「世界最高の3D技術を、オープンソースとしてアーティストの手に届け、それを使って素晴らしいものを作ること」とまとめられます。
これからもBlenderは、持続可能で将来に耐えられる組織を目指しています。オープンソースの理念、好奇心と革新の価値観、技術的な卓越性へのこだわりを深め、創造の目標をさらに高めていこうとしています。
補足:歴史の記述を読むときに
ここは原典本文とは別の編集上の補足です。募金を「史上初」とする表現やGPLを「最も厳格」とする評価は、原文の表現であり、本連載が独自に検証した評価ではありません。人数、サービス名、開発状況も原文の時点の記録として読んでください。操作を学ぶときは、当時の機能と現在使う版の機能を区別しましょう。
歴史ページ後半の全バージョン年表は、「Blenderの歩みをたどる年表」に続きます。
出典と利用条件
この記事で参照したマニュアルの項目:
原著:Blender Documentation Team、Blender 5.2 Manual。底本はBlender 5.2 LTS ManualのEPUB版です。ファイル内の発行日時メタデータは2026年10月19日で、記事の検証日とは別です。原典のライセンス表示に従い、裏庭(Uraniwa)が翻訳・要約・再構成・説明の補足を行いました。この記事の本文・補足・独自の図解と作例画像はCC BY-SA 4.0で公開します。Blender公式による記事・推奨を示すものではありません。原典で適用対象外とされるロゴ・商標・アイコン・ソースコード・Pythonスクリプトなどには、この許諾は適用しません。