分野別の詳説:参照したマニュアルの主要な仕組み・操作・設定を翻訳・要約・再構成した日本語解説です。全項目の逐語訳ではありません。確認順や例は編集上の補足です。手順から先に読み、必要なときに後半の仕組みの解説へ進めます。

この章の目標:床と落とす物体を分ける。
準備:開始フレーム・初期交差なし。

物体はActive → 床はPassive → 先頭から再生 → Cacheをベイク。成功:物体が実体の床へ落ちて止まる。注意:床の格子に衝突を期待する
手順と確認点の模式図。図を押すと拡大できます。

実践:床に落ちる剛体を作る

  1. 開始フレームで床と落とすメッシュを作り、互いに交差しない位置へ置きます。物体の大きさと単位を確認します。
  2. 落とす側へRigid BodyのActive、床側へPassiveを追加します。床を単なる表示用の格子と取り違えないよう、実体のメッシュを用意します。
  3. 箱状の物体ならBoxなど、形に合うCollision Shapeを選びます。凹みのある形へConvex Hullを使うと、その凹みは凸包でふさがれます。
  4. 摩擦・反発・質量を設定し、開始から時間を進めます。途中へ大きく飛んで出た結果だけで判断しません。
  5. すり抜ける場合は、床の衝突形状、初期交差、寸法、速さ、Substeps Per FrameやSolver Iterationsを調べます。
  6. 結果が決まったらRigid Body WorldのCacheで必要な範囲をベイクします。設定を変えた場合は古いベイクを消して再計算する必要があるかを確認します。

Transform欄の位置と見えるシミュレーション結果は別です。落下後の形を静止物として残す場合と、全期間の動きをアニメーションとして残す場合は、適用・ベイクの対象を分けます。

実践:布を物体へかぶせる

  1. 布となるPlaneをEdit Modeで分割し、曲がるための頂点を用意します。下に置くメッシュと最初から交差させないようにします。
  2. 布へCloth、下の障害物へCollisionを追加します。Cloth側のObject Collisionsも確認します。
  3. 一部を固定したい場合は、対象頂点のグループへ重みを割り当て、ClothのShapeのPin Groupへ指定します。
  4. 低い負荷の設定から開始フレームから再生し、形を見ます。曲がり方はBending、伸びはTension等のStiffness、揺れの減衰はDampingで別に調整します。
  5. 自己の重なりが問題ならSelf Collisionを検討します。Distanceを大きくすると隙間が増えるため、厚みの単位と物体の大きさを合わせます。
  6. 形ができた後で、Clothの後段にSubdivisionやSolidifyを加えて見た目を整える構成を検討します。前段へ置く場合は計算対象の形や密度が変わります。
  7. 保存先と範囲を決めてキャッシュをベイクします。ある一枚の形だけが欲しいなら、そのフレームで適用する方法と動き全体の保持を区別します。

物理設定を現象へ結び付ける

設定主に変わること先に確認する前提
Friction接触面での滑り接触しているか、衝突形状とMarginが適切か
Bounciness接触後の反発初期交差や精度不足の爆発的な動きと区別する
Collision Shape計算で使う近似形Box・Hull・Meshで中空や凹みの扱いが違う
Substeps Per Frameフレーム内の計算回数速い運動や薄い障害物での移動量
Solver Iterations接続・接触の解法の反復積み上げや制約の安定性、計算時間
ClothのTension / Compression伸び・圧縮への抵抗メッシュの分割・スケールが適切か
ClothのBending曲がりへの抵抗折り目の大きさと密度、曲がる方向
Damping振動などの減衰Stiffnessと同じ役割ではない
Pin Group元の形や動きへ固定する範囲グループの重みと、固定する頂点の選択
Collision Distance接触判定の距離表示の厚みと同じ数値にすればよいわけではない

布のSewingは、面に属さない追加の辺をばねとして使い、離れた頂点を引き寄せる仕組みです。Pinのように位置を固定することとは違います。極端な初期距離や無制限の力は不安定さの原因になるため、Max Sewing Forceなども確認します。

Soft Body・力場・キャッシュの扱い

Soft Bodyで揺れる形を作るには、形を保つEdges等の内部の力と、元の位置へ追従するGoalを別々に調整します。Goalが強く保持しているのに重力だけを増やしても、期待した自由落下にはなりません。CollisionとSelf Collisionの設定も別です。

風や渦などのForce Fieldは、種類、軸、強さ、距離による減衰、各方式のEffector Weightsを合わせます。重力はScene全体の入力で、材質の重そうな見た目とは無関係です。複数の力を一度に増やすより、一つずつ作用を確認します。

各方式のキャッシュは設定と保存形式が同じではありません。期間・保存先・名前を明示し、別のパソコンへ渡すならキャッシュも必要かを確かめます。後で設定を直すための元ファイルと、固定した結果を両方保持すると再調整できます。

仕組みと用語を調べる

動かすのか、変形させるのか

Rigid Bodyは硬い物体の位置と向きを計算し、形そのものは変形させません。Clothは布のような曲がる表面、Soft Bodyは弾性のある変形や揺れを扱います。流体は密度や速度などを空間内で計算する別の方式です。材質をゴムや金属にしただけでは、物理演算の方式は変わりません。

シミュレーションは初期状態、時間、単位、衝突、力、精度を合わせて使います。アニメーションのキーと同様に自由に任意のフレームへ飛べば、常に正しい状態が得られるとは限りません。前の状態から計算する方式では、開始からの評価とキャッシュが重要になります。

剛体のActiveとPassive

メッシュにRigid Bodyを追加し、Activeは動力学で動く物体、Passiveは床や障害物などの基準として使います。Animatedを使うと、アニメーションから動きを与える構成もできます。動的な物体では、シミュレーションが位置と向きの見た目を決めるため、Transform欄だけから最終的な状態を判断しません。

質量、摩擦、反発はそれぞれ役割が違います。質量を増やせば必ず速く落ちるという設定ではありません。衝突形状は計算に使う近似で、表示される詳細メッシュと一致しない場合があります。Convex Hullは凹みを正確に表現する方式ではないため、器の内側などの用途では形状の選択を見直します。

Rigid Body Worldと接続

SceneのRigid Body Worldには、参加するオブジェクトと制約のCollection、計算の精度やキャッシュ範囲があります。物理設定を付けても、対象のCollectionとの関係が不適切なら計算へ入らない場合があります。Substeps Per Frameはフレーム間の計算回数、Solver Iterationsは制約を解く反復数で、増やすほど計算時間がかかります。

Rigid Body Constraintは二つの剛体の関係を定め、固定、ヒンジ、スライダー、ばねなどの接続を作ります。オブジェクトやボーンの変換制約と、剛体間の物理的な制約は別の仕組みです。接続点の位置と向き、可動軸、制限、破断の条件などを確認します。

クロスとモディファイアー順

Clothは衣服、旗、布だけでなく、設定によってクッションなどにも利用できます。曲がりや伸縮を表現するには、形が変わるための頂点と辺が必要です。非常に粗い面へ設定を加えるだけでは、細かな折り目は生まれません。一方で、最初から細分化しすぎると調整の計算が重くなります。

Clothの結果にはモディファイアー順が影響します。計算前に細分化することと、計算後に表面を滑らかにすることは違います。Pin Groupは固定やアニメーションへの追従を制御し、Pressureは閉じた形を膨らませる用途などに関係します。形を支える仕組みを決めてから、品質を上げます。

衝突・自己衝突・厚み

Clothが別の物体と衝突するには、その物体側のCollision設定も確認します。Self Collisionは布同士の重なりを防ぐための計算です。距離のしきい値、物体の大きさ、分割、時間ステップによって、浮いて見える、潜り込む、激しく跳ねるなどの結果が変わります。

見た目の厚みを付けるSolidifyと、衝突計算で使う距離は同じではありません。初期状態で交差していないか、スケールが適切か、速い動きに対して計算回数が足りるかを先に調べます。原因を確かめず、品質の数値だけを上げると計算時間だけが増える場合があります。

ソフトボディとGoal

Soft Bodyは、重力や風などの外力と、頂点間を保つ内部の力を組み合わせます。身体の揺れ、ゴムのような変形、揺れる枝などの二次的な動きに使えます。布の専用計算にはClothの方が適している場合があります。

Goalは元の位置やアニメーションへ追従する性質に関係します。Edgesのばねによる構造と、Goalの追従は別です。まったく落ちない場合は、重力だけでなく元の形へ強く保たれていないかを確認します。CollisionとSelf Collision、速度や減衰も、揺れの落ち着き方へ関係します。

重力と力場

重力はSceneの設定で、Force Fieldには風、渦、乱流、引力などの種類があります。強さに加え、方向、距離による減衰、作用する範囲、各シミュレーションのEffector Weightsを確認します。同じ力場がすべての物理方式へ同じ形で働くとは限りません。

風を見える面のように扱うのではなく、シミュレーションへ与える入力として考えます。複数の力場を置いた場合は、それぞれを単独で確認すると原因を追いやすくなります。これは編集上の切り分け例です。

キャッシュとベイク

キャッシュは計算結果を再利用する仕組みで、ベイクは結果を保存・固定する工程です。方式ごとに設定が異なります。開始・終了、ディスクの保存先、名前を確認し、レンダリング前に必要な期間が揃っているかを確かめます。複数キャッシュの名前が衝突すると保存に問題が起きるため、原典は識別できる名前を付けるよう注意しています。

設定を変えた後に古い結果が見えるなら、ベイクの削除と再計算が必要かを確認します。特定フレームのClothを適用して静止形状にすることは、時間に沿う結果を丸ごと保持することではありません。最終出力用の結果と、調整できる元設定を分けて保存します。

検証した範囲

最終確認:2026年10月23日。Blender 5.2.2 LTS(macOS / Apple silicon)を背景実行し、次の内容を確認しました。

  • ActiveのCubeとPassiveの床を40フレーム計算し、落下後の高さが床上約1であることを確認。ClothとSoft Bodyは未検証。

背景実行ではPython APIを使用しています。マウス・キー入力、画面遷移、インストール、各入力機器での操作を通して確認したものではありません。上記にない応用・設定の組み合わせは実行未検証です。

出典と利用条件

この記事で参照したマニュアルの項目:

原著:Blender Documentation Team、Blender 5.2 Manual。底本はBlender 5.2 LTS ManualのEPUB版です。ファイル内の発行日時メタデータは2026年10月19日で、記事の検証日とは別です。原典のライセンス表示に従い、裏庭(Uraniwa)が翻訳・要約・再構成・説明の補足を行いました。この記事の本文・補足・独自の図解と作例画像はCC BY-SA 4.0で公開します。Blender公式による記事・推奨を示すものではありません。原典で適用対象外とされるロゴ・商標・アイコン・ソースコード・Pythonスクリプトなどには、この許諾は適用しません。